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G foundation collection #7 榎倉康二

《予兆—床・手》 1974年
ゼラチン・シルバー・プリント(ヴィンテージプリント) 
20.6 × 19.0 cm

G foundation collection Tokyo では、榎倉康二のコレクション展を開催いたします。本展は、国立市内5つのギャラリーが同時開催する写真イベント「国立写真間」(2026年5月16日〜5月31日)への参加展示でもあります。

「国立写真間」は、写真の現在地を問う試みとして、国立という街の中に散らばる5つの場所でそれぞれが異なる作家・視点を紹介する、ユニークなイベントです。そこに、1970年代に活動した榎倉康二の仕事を持ち込むことには、私なりの理由があります。

榎倉康二(1942–1995)は、日本の戦後美術において、私がもっとも重要と考える作家のひとりです。

「もの派」の文脈で語られることが多い榎倉ですが、そこには少し補足が必要だと思っています。李禹煥や菅木志雄ら、同時代のもの派の作家たちの作品は、極限まで情報を削ぎ落とし、素材と空間だけで成立するミニマルなものが多い。ところが榎倉は、写真という、情報量の多い、記録性と物語性を帯びた媒体を使い続けた。これは偶然ではないと思います。

榎倉が写真で捉えようとしたのは、「もの」そのものではなく、「もの」と身体のあいだに生じる出来事——接触の瞬間、浸透の痕跡、触れるか触れないかの緊張——でした。それは目に見えない、一瞬しか存在しない何かです。石や鉄板で「もの」を提示したほかの作家たちとは違い、榎倉には、その不可視の瞬間を定着させるために、写真という手段が必要だったのではないか。ミニマルであることより、その一瞬の温度を残すことの方が、彼には切実だったのだと思います。

インスタレーション、写真、版画、絵画と多岐にわたる創作活動の中で、浸透や接触などの物理現象を通して、人間的なる行為と自然的なる事象の関係性を視覚化し続けた。国際的には、第10回日本国際美術展「人間と物質」(1970年)、パリ青年ビエンナーレ(1971年、優秀賞)、ヴェネツィア・ビエンナーレ(1978年、1980年)と、その存在は早くから世界に知られていました。にもかかわらず、榎倉の仕事が日本国内で正面から見直される機会は、まだ十分とは言えないと感じています。本展が、その一助になれば、と思っています。

当財団では現在、大小合わせて15点の榎倉作品を収蔵しています。1970年から90年代にかけての日本美術を体系的に収集してきた結果として、コレクションとしてのまとまりと深度には、自分でも手応えを感じています。本展では、その中から選りすぐりの6点を展示いたします。

G foundation collection Tokyo is pleased to present an exhibition of works by Koji Enokura from our collection. The exhibition is also part of Kunitachi Shashin-kan (May 16–31, 2026), a photography event held simultaneously across five galleries in the city of Kunitachi.

Kunitachi Shashin-kan is a unique initiative that explores the current state of photography, with each of five locations scattered across the city presenting a distinct artist and perspective. There is a reason — my reason — for bringing Koji Enokura’s work, made in the 1970s, into that conversation.

Koji Enokura (1942–1995) is, for me, one of the most important artists in Japanese postwar art.

He is often discussed in the context of Mono-ha, but I think that framing requires some qualification. The work of his contemporaries — Lee Ufan, Kishio Suga, and others — tends toward the minimal: stripped of excess, sustained by material and space alone. Enokura, by contrast, continued to work with photography — a medium dense with information, charged with documentary and narrative potential. I don’t think that was incidental.

What Enokura sought to capture through photography was not “things” themselves, but what happens between things and the body — the moment of contact, the trace of permeation, the tension of almost-touching. Something invisible. Something that exists only for an instant. Unlike artists who presented objects — stone, steel plate — as the work itself, Enokura needed photography to fix those imperceptible moments in place. For him, I believe, holding onto that instant of warmth mattered more than achieving the minimal.

Across installations, photography, prints, and paintings, he continued to visualize the relationship between human action and natural phenomena — through physical processes of permeation and contact. His presence was recognized internationally early on: the 10th Japan Art Festival Man and Matter (1970), the Paris Youth Biennale (1971, Prize of Excellence), and the Venice Biennale (1978 and 1980). And yet I feel that his work has still not received the sustained critical attention it deserves here in Japan. I hope this exhibition contributes, in some way, to changing that.

The G foundation currently holds 15 works by Enokura — large and small — assembled through a sustained effort to collect Japanese art from the 1970s through the 1990s. The depth and coherence of the collection is something I feel genuinely confident in. For this exhibition, we have selected six works.


写真:千葉市美術館公式ページより

写真:《予兆—床・手》《予兆—海・肉体》《P.W. No.9》

「予兆」シリーズは、榎倉の写真作品の核心にある仕事です。床に置かれた手、波打ち際に横たわる自らの肉体——触れるか触れないかの、その瀬戸際の緊張が、静かな画面の中に凝縮されている。これを前にしたとき、私は榎倉が「冷たい世界」を追っていたのではなく、世界と自分の身体が接触する、その一瞬の温度を掴もうとしていたのだと感じます。榎倉自身の言葉を借りれば、「肉体と物との緊張感こそ私が探りたい事であり、そしてこの緊張感が自分自身の存在を自覚し得る証しだと思う」と。

予兆—海・肉体(1972年)は、最も象徴的な作品といわれており、おそらく榎倉の写真作品のなかでも最も著名な作品でしょう。予兆—床・手(1974年)も同様に代表的なイメージで、この2つの作品が、榎倉の写真作品の代表作といっても良いでしょう。どちらも数点のオリジナルプリントが現存するようですが、国立国際美術館や千葉市美術館に収蔵されており、個人のコレクションとしては当方のものが唯一かと思われます。

また、《P.W. No.9》(1972年)は、予兆シリーズと同時期に制作されたシリーズです。アスファルトの質感、ドラム缶の緊迫感、プリントの質感を感じさせる作品になっています。

今回展示する3点はいずれもオリジナルのヴィンテージ・プリントです。ヴィンテージ・プリントの展示機会は多くありません。


《Figure No.45》(1981年、アクリル・コットン、259.5 × 260.0 cm)

後期1980年から90年にかけて、榎倉は綿布にしみをつけるという行為を探求しつづけました。表面全体にペンキを浸した260cm四方に近い巨大なキャンバスが、壁に掛けられて空間を占有する。インスタレーションの形態でありながら、榎倉はここでキャンバスという絵画の根本に立ち戻っています。布が重力に従い、空間に接する——それ自体がすでに、榎倉の問いの続きです。実物の前に立って、それぞれに感じてほしいと思っています。

Figureシリーズの代表作は1980年のヴェニスビエンナーレで展示されています。

《Figure No.45》 1981年 
アクリル・コットン 259.5 × 260.0 cm
1980年、ヴェニスビエンナーレ
(写真:ベネチア・ビエンナーレ日本館公式サイトより)

《干渉 No1〜5》(1985年、スクリーンプリント、66.2 × 98.3 cm)

通称しみの作品といわれるは「干渉」シリーズとしてしられます。油を浸した木材をキャンバスに押しつけたり、立てかけたりすることでキャンバス上にしみをつけるという手法で、大型のインスタレーションが作成されました。代表作は、1978年のヴェニスビエンナーレで展示されています。

本展では、干渉シリーズのシルクスクリーンプリント作品を展示します。スクリーンの形状は固定的であるものの、インクではなく油をつかってプリントしており、微妙なにじみ具合などは作品毎にことなる味をだしています。

1978年、ヴェニスビエンナーレ
 (写真:ベネチア・ビエンナーレ日本館公式サイトより)

《Drawing B-22》(1981年、ボイルド・オイル、パステル、コンテ、紙、プレキシグラス装、112.8 × 204 cm)

廃油が紙に染み込み、にじみ、広がっていく。その痕跡がドローイングの本体です。さらに榎倉によるパステルの筆致が加わり、この大作のドローイングを構成しています。この作品が《Figure No.45》と同じ1981年であることに、私はいつも引っかかります。物質的なものと絵画的なもののあいだで、榎倉がその年に何を考えていたか。2点を並べて見ると、何かが見えてくる気がします。

《Drawing B-22》 1981年 
ボイルド・オイル、パステル、紙、プレキシグラス装 
112.8 × 204 cm

G foundation collection #7 榎倉康二

主催 G foundation
「国立写真間」参加展示

展示作品(予定)

  • 《予兆—床・手》 1974年 ヴィンテージ・ゼラチンシルバープリント 20.6 × 19.0 cm
  • 《予兆—海・肉》 1972年 ヴィンテージ・ゼラチンシルバープリント 20.2 × 25.4 cm
  • 《P.W. No.9》 1972年 ヴィンテージ・ゼラチンシルバープリント 25.0 × 33.5 cm
  • 《干渉 No.1〜5》 1985年 スクリーンプリント 各66.2 × 98.3 cm
  • 《Figure No.45》 1981年 アクリル・コットン 259.5 × 260.0 cm
  • 《Drawing B-22》 1981年 ボイルド・オイル・パステル・コンテ、紙、プレキシグラス装 112.8 × 204 cm

会期  
2026年5月16日(土)〜5月31日(日) 「国立写真間」参加期間
2026年6月1日(月)〜7月30日(木) 通常展示期間

開廊時間 12:00 〜 18:00(月・火・水 休み) ※「国立写真間」期間中は予約不要

場所 G foundation collection Tokyo (東京都国立市西2丁目11−51

オープニングレセプション 2026年5月16日(土) 15:00〜19:00

「国立写真間」について 本展は、国立市内5つのギャラリーによる写真イベント「国立写真間」の参加展示です。同期間中、国立市内の各会場でも写真作品の展示が開催されています。詳細は www.kunitachishashin-kan.net をご覧ください。

アポイントメントについて(「国立写真間」期間外) 「国立写真間」期間以外のご来場はアポイントメント制となります。ご希望の方は、インスタグラム連絡専用アカウント @gfoundationtokyo へダイレクトメッセージにてお知らせください。(コメントは読んでいません。必ずDMでお願いします)

Dates
May 16 (Sat) – May 31 (Sun), 2026 Kunitachi Shashin-kan period
June 1 (Mon) – July 30 (Thu), 2026 Regular exhibition period

Opening Hours 12:00 – 18:00 (Closed Monday, Tuesday, Wednesday) No reservation required during the Kunitachi Shashin-kan period

Venue G foundation collection Tokyo 2-11-51 Nishi, Kunitachi, Tokyo

Opening Reception Saturday, May 16, 2026 15:00 – 19:00

Visiting by Appointment (Outside the Kunitachi Shashin-kan Period) Outside the Kunitachi Shashin-kan period, visits are by appointment only. To arrange a visit, please send a direct message to our Instagram account @gfoundationtokyo. (We do not monitor comments — please use DM only.)


  • アポイントメントは、事前に希望の日時、時間をご連絡ください。予定のつく限り、土日祝含め、時間帯なども柔軟に調整いたします。
  • アポイントメントですが、下記QRのインスタグラムの連絡アカウント(@gfoundationtokyo) までにダイレクトメッセージで連絡してください(コメントは読みません、かならずダイレクトメッセージでお願いします)
  • An appointment is necessary. Please contact us on previously.
  • We will accommodate visits between 13:00 and 5:30 pm on weekdays as well as Saturdays, Sundays, and holidays whenever possible.
  • To make an appointment, please contact us via private message to our Instagram account. QR code is above. (@gfoundationtokyo).

G foundationは、創設者の大石氏のコレクションを母体に900点以上の現代美術作品を収蔵する財団です。長らくのあいだ、コレクションは外に公開することがありませんでしたが、2021年の財団化をきっかけに、広くコレクションを公開していくこととなりました。

”G” foundation collection Tokyoは、東京都国立市に常設するコレクションスペースになります。

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